占いを開業したら、考えるべきことの一つに「開業届をいつ出せば良いか?」があります。
始めから儲かってるならすぐ出せば良いですが、多くの占い師はそうではありません。
「継続して稼げるかどうかもわからないのに、開業届を出さなくてはならないのか?」と悩む人も多いです。
そこで、今回は
- 占い師はいつ開業届を出せば良いか?
- 開業届を出すメリットやデメリット
…を考えてみます。
この記事は、様々な情報を参考に正確を期して作成しています。
ですが、税法は常に改正されています。また、素人では判断がつきにくい案件もあります。
税務に関する最終的な判断は、税理士にご相談ください。

開業届に関する「法律上の決まり」

まず、開業届に関する「法律上の決まり」を解説します。
開業届とは?
開業届とは「個人事業を始めたこと」を税務署に申告するための書類です。
占いで稼いだら、年間(1月1日〜12月31日)の所得を計算し、納税する必要があります。
開業届を提出することによって、税務署に「個人事業を始めたので、税金を収めることになります」と報告することになるのです。
開業届の書式は、以下で確認できます。
開業届はいつ出すのか?
そもそも、開業届はいつ出す決まりになっているのでしょうか?
基本は、開業してから一ヶ月以内
開業届は、開業日から1ヶ月以内に管轄の税務署宛に提出する必要があります。
届けを出さないと罰則はある?
ただし、届出を提出しなくても罰則はありません。
ですが、税務上のメリットを受けられなくなる可能性があります。
開業届を出した場合のメリット

では、開業届を出すことで、どんなメリットがあるのでしょうか?
1.「事業所得」から最大65万円を控除可能(青色申告)
開業届を出して「青色申告承認申請書」を提出すれば、青色申告をすることができます。
そうすると、事業所得から最大65万円を控除することが可能になります。
たとえば、占いの仕事で100万円稼いだとしたら「100万円-65万円=35万円」に所得を圧縮できるというわけです。

これは節税効果が高いですね。
2.家族への給与を全額「経費」にできる
このメリットは、一人で占い師をやっている方には、あまり関係ありません。
家族を「従業員」として使ってる人向きのメリットです。
通常、家族への給与は経費として認めてもらえません。
ですが、開業届を出して青色申告すれば「事業に従事している家族(15歳以上)へ払う給与」は全額を必要経費にすることができます。
3.赤字を3年間繰り越し可能(青色申告)
開業届を提出して青色申告することで、事業で発生した赤字を3年間繰り越しできます。
たとえば、今年の占いの稼ぎが悪く「100万円の赤字」が出てしまったとします。
そうすると、その赤字を翌年以降の所得(最大3年間)から差し引くことが可能になります。
また、「繰戻し還付」と言って、損失を前年に適用し、税金を還付することもできます。
4.「屋号付き銀行口座」を開設できる
開業届を提出すると、屋号付き銀行口座を開設できます。
屋号とは、簡単に言うと「お店や事務所の名前」ですね。
たとえば「タロットハウス」という占いのお店を始めたければ、この名前を屋号として申請できます。
そうすれば、タロットハウスという名前の入った銀行口座を開設できるわけです。
屋号の入った銀行口座を持つメリット
屋号の入った銀行口座を持つメリットは以下です。
お客さんからの信頼度がアップする
占いの鑑定料を口座に振り込んでもらう際、やはり、個人名よりビジネス名の方が安心できると思います。
ちゃんと、事業を運営している感じがありますからね。
収支の管理がラク
個人口座とは別に「ビジネス用の口座」があると便利です。
仕事の収支を一つの口座で管理できて、経理の作業をしやすくなるからです。
プライベートとビジネスの口座が一緒だと、確定申告の際、仕分けが大変になってしまいます。
また、もし税務調査が入った時、ビジネス用通帳がないと、プライベート用通帳を見せなくてはなりません。
そんなストレスも、屋号入り銀行口座を持てばなくなります。
5.社会的信用をキープすることができる
会社員の場合は「社員証」などがありますが、フリーランスの場合、そのようなものはありません。
ですが、開業届を出すことで「ビジネスに従事している」と証明することできます。
その結果、社会的信用を維持しやすくなります。
また、
- オフィスの賃貸契約
- 融資の審査
- クレジットカード決済の導入
- 持続化給付金などの給付
…などが容易になる、というメリットもあります。



私は、以前、開業届を出してなかったので、レンタルオフィスを借りることができませんでした。
6.小規模企業共済に加入できる
開業届を提出するメリットの1つに、小規模企業共済に加入できることがあります。
小規模企業共済は、個人事業主などが利用できる「積み立て退職金制度」です。
個人事業主には、サラリ-マンのような退職金はありません。
しかし、小規模企業共済に加入しておくと、事業をやめた時に退職金をもらうことができます。
また、掛金は全額所得控除できるので、税金を安くするメリットもあります。
開業届を出した場合のデメリット


逆に、フリーランスが開業届を出すことで、どんなデメリットがあるのでしょうか?
1.失業給付を受けられないケースがある
たとえば、会社勤めの人が開業届けを出すと「個人事業主」とみなされてしまいます。
すると、会社をやめた際、失業給付を受けられない可能性があります。
ですので、失業給付を受けることを考えている人は、開業届の提出には注意が必要です。
2.健康保険の被扶養者から外されてしまうこともある
健康保険については、扶養の条件が組合によって違います。
「所得額」によって決めているところもあれば、「個人事業主は扶養に入れない」とされている場合もあります。
もし後者の場合だと、開業届を出すことによって健康保険の被扶養者から外されてしまう可能性があります。
3.帳簿付けが面倒になる
これは「青色申告した場合のデメリット」です。
青色申告する場合、帳簿のつけかたを「複式簿記」にしなければなりません。
白色申告の「単式簿記」と比べると、書き方が複雑になります。
人によっては、それが負担になることもあるでしょう。
ですが、今は、やよいシリーズ
ですので、それを利用すると楽になるかもしれません。
開業届は「白色申告」でもOK


ちなみに、開業届を出したからといって「青色申告」しなければならないわけではありません。
「白色申告」でも良いです。
- 最大65万円の控除を受けたいのであれば青色申告(複式簿記が必要)
- 控除なしで良ければ白色申告(単式簿記でOK)
…です。
青色申告・白色申告ともに適用される控除
ちなみに、青色申告でも、白色申告でも、以下の控除があります。
基礎控除
ありがたいことに、すべての人に適用される控除です。
48万円が控除できます。
社会保険料控除
- 健康保険料
- 介護保険料
- 国民年金
…などで支払った金額を控除できます。
「生計を一にする配偶者や家族」の分も控除可能です。
配偶者控除
配偶者の所得が48万円以下なら適用できます。
最大38万円の控除が可能です。
占い師はいつ開業届を出せば良い?


では、上記を考慮すると、占い師は「いつ開業届を出せば良い」のでしょうか?
基本は、ビジネスを始めてから一ヶ月以内が原則です。
ですが、以下に注意する必要がありそうです。
- 事業として成立しそうか?
- 所得(収入ー経費)が48万円以上あるか?
- 扶養をはずれてもOKか?
- 失業給付を受ける予定がないか?
1.事業として成立しそうか?
継続して利益を出せて、ビジネスとして成立するのであれば、開業届を出すべきでしょう。
ですが、本業の合間にちょっとやる程度の副業で「継続した利益が見込めない」のであれば、届けを出す必要があるかは疑問です。
2.所得(収入ー経費)が48万円以上あるか?
他で働いておらず、占いだけで「所得が48万円以上」あるのなら開業届を出すべきです。
ですが、それ以下の所得であれば、そもそも納税する必要がありません。
(基礎控除が48万円だからです)
ですので、所得(収入ー経費)が48万円以下なら、開業届を出す必要はなさそうです。
ただし、他で働いている場合は、基礎控除の48万円は使えません。
その場合は、所得が20万円を超えたら、確定申告をする必要が出てきます。
3.扶養をはずれてもOKか?
これは、旦那さんの扶養になっている方のケースです。
「扶養をはずれても問題ないかどうか?」を考えましょう。
とは言っても、所得が48万円以上ある場合は、いずれにしろ開業届を出して扶養を外れなければなりません。
それを避けるには、所得を抑えるしかありません。
4.失業給付を受ける予定がないか?
近いうちに会社をやめて「失業給付を受けよう」と考えている人のケースです。
その場合、開業届を出すタイミングを考慮する必要があります。
開業届を出してしまうと、失業給付を受けられなくなる可能性があるからです。
開業届を出す際の注意点
これは、脱サラして占いを開業する人の注意点です。
やはり、フリーランスになると「社会的信用」は下がります。
ですので、会社に所属しているうちに、審査が必要になるようなことは済ませておきましょう。
たとえば
- クレジットカード作成
- 引っ越す場合の賃貸契約
- 大きな買い物のローン契約
…などの予定がある人は、会社に所属しているうちに済ませておく方が良いでしょう。
まとめ
今回は、占い師はいつ開業届を出せば良いか?について解説しました。
占い師として開業する場合、開業届の提出は必須ではありません。
また、提出することで、以下のようなメリット・デメリットがあることを覚えておきましょう。
- 青色申告による節税効果
- 家族への給与を経費にできる
- 赤字を3年間繰り越せる
- 屋号付き銀行口座を開設できる
- 社会的信用を得られる
- 扶養から外れる可能性がある
- 失業給付を受けられないケースがある
- 帳簿付けが面倒になる



開業届を提出する時期は、状況によって異なります。
ご自身のケースを、よく考えて判断することをお勧めします。
この記事は、様々な情報を参考に正確を期して作成しています。
ですが、税法は常に改正されています。また、素人では判断がつきにくい案件もあります。
税務に関する最終的な判断は、税理士にご相談ください。



以下は弥生株式会社の記事です。あわせて参考にしてみてくださいね。


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